事業承継税制の一環として、自社株式に係る贈与税の納税が猶予される制度があると聞きましたが、どのような制度なのでしょうか?

先代経営者保有の対象株式の全部を一括で贈与により取得した後継者がその会社を経営していく場合、贈与前から既に保有していた議決権株式等を含めて発行済議決権株式総数の2/3に達するまでの部分については、猶予対象株式等の贈与に係る贈与税の全額の納税が猶予される制度です。この制度は、平成21年4月1日以降の贈与に適用されています。

1.贈与者(先代経営者)の主な要件
・会社の代表者であったこと。
・先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であった場合。
・贈与時に役員を退任していること。

2.認定対象会社の要件
・中小企業基本法における中小企業者であること(特例有限会社、持株会社も対象となります)。
・非上場会社であること。
・資産管理会社に該当しないこと。  等
資産管理会社・・・有価証券・不動産・現金等の合計額が総資産の70%以上を占める会社及びこれらの運用収入の合計額が総収入額の75%以上を占める会社のこと。ただし、事業実態のある会社は除きます。
 対象となる中小企業者の範囲について、みてみましょう。
製造業、建設業、運輸業、その他の業種については、原則として、資本金の額が3億円以下又は従業員数が300人以下とされていますが、ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除きます)については、資本金の額が3億円以下又は従業員数が900人以下です。卸売業については、資本金の額が1億円以下又は従業員数が100人以下、小売業については、資本金の額が5,000万円以下又は従業員数が50人以下とされています。サービス業については、原則として、資本金の額が5,000万円以下又は従業員数が100人以下とされていますが、ソフトウェア・情報処理サービス業については、資本金の額が3億円以下又は従業員数が300人以下で、旅館業については、資本金の額が5,000万円以下又は従業員数が200人以下です。

3.受贈者(後継者)の主な要件
・会社の代表者であること。
・先代経営者の親族であること。
・後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となる場合(一つの会社で適用される人は一人です)。
・20歳以上であり、役員就任から3年以上経過していること。
親族・・・6親等以内の血族(甥・姪等)・配偶者・3親等以内の姻族(娘婿等)のこと。

4.事業継続要件
 たとえ一旦、納税猶予の適用を受けたとしても、次の要件を満たさなくなった場合は、猶予税額の全額又は一部を納付することとなってしまいます。その場合には、利子税も併せて納付することが必要です。
・贈与税の申告期限後5年間、受贈者(後継者)が代表者であること。
・贈与税の申告期限後5年間、雇用の8割以上を維持すること。
・贈与された対象株式を継続して保有すること。  等

5.贈与税の猶予税額が免除される場合
 次の場合に、贈与税の猶予税額の全部又は一部が免除されることとなります。
・贈与者(先代経営者)の死亡のとき以前に、受贈者(後継者)が死亡した場合。
・贈与者が死亡した場合。
・贈与税の申告期限後5年経過後に、対象株式の全部を親族以外の人に譲渡した場合。  等
 先代経営者が死亡した場合、後継者が先代経営者から相続により対象株式を取得したものとみなされます。このとき、贈与時の評価で相続税が課されます。なお、この相続等によって相続したものとみなされた対象株式は、相続税の納税猶予の認定要件のうち一定のものを満たすことについて経済産業大臣の確認を受ければ、相続税の納税猶予が適用されることになります。

6.納税猶予を受けるための主な手続き
 贈与税の納税猶予制度を利用するには、贈与前に、会社が計画的な事業承継に係る取組みを行っていることについて、経済産業大臣の確認を受けておかなければなりません。さらに、贈与の翌年の1月15日までに申請を行って、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。
 贈与税の申告期限後5年間は、毎年、経済産業大臣への報告と税務署長への届出をしなければなりません。その後は、3年ごとに、税務署長への届出をしなければなりません。

7.相続時精算課税制度との併用
後継者が贈与税の納税猶予制度の適用を受けている場合であっても、後継者を含む推定相続人は、相続時精算課税制度を利用することが可能です。
例えば、先代経営者が発行済議決権株式総数100%を後継者に一括贈与した場合、発行済議決権株式総数の2/3については贈与税の納税猶予を適用し、適用対象外となる発行済議決権株式総数の1/3については相続時精算課税制度を利用することが可能です。